赤ちゃんや小さな子どもを育てる中で、むし歯は親からうつると聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、むし歯は生まれつき持っているものではなく、特定の菌による感染症の一つです。
そのため、親や身近な大人の口から赤ちゃんへとむし歯菌がうつり、むし歯の原因となります。
ここでは、むし歯がうつる仕組みとその理由、さらに親ができる予防の工夫について詳しく解説します。
目次
■むし歯はどうして起こる?
◎むし歯菌の正体
むし歯の原因はミュータンス菌と呼ばれる細菌です。
この菌は食べ物に含まれる糖分を分解し、むし歯の原因となる「酸」を作り出します。
その酸によって歯の表面のエナメル質が溶け、穴があいてしまうのがむし歯です。
◎赤ちゃんにはむし歯菌がいない
実は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌は存在しません。
赤ちゃんがむし歯になるのは、外部から菌がうつって定着してしまうためです。
では、なぜむし歯はうつるといわれるのでしょうか。
■むし歯はうつると言われる理由
◎親の唾液が感染経路になる
むし歯菌が赤ちゃんに移る大きな原因は、親や家族の唾液です。
例えば、同じスプーンや箸を使ったり、親が噛んで柔らかくした食べ物を与えたりすることで、唾液を介して菌が子どもの口に入り込みます。
◎感染のタイミング「感染の窓」
特に注意が必要なのは、乳歯が生え始める1歳半から3歳頃の時期です。
この時期は感染の窓と呼ばれ、むし歯菌が口の中に定着しやすいと言われていて、一度定着すると、その後ずっと菌がすみつく可能性が高くなります。
◎赤ちゃんへのむし歯を完全に予防するのは難しい
むし歯菌は生活の中でごく自然に広がるものであり、親子でのスキンシップや食事を完全に制限してまで感染を避けることは現実的ではありません。
そのため、むし歯菌を一切うつさないことを目指すのではなく、親自身が口腔環境を整え、子どもに菌がうつっても定着しにくい環境を作ることが大切です。
具体的には、親が定期的に歯科検診を受けてむし歯にならないようにしておくことや、子どもには仕上げ磨きやフッ素ケアを習慣化することが重要になります。
■親ができるむし歯予防の工夫
◎スプーンや箸の共有を避ける
赤ちゃんには専用のスプーンやフォークを用意し、大人と使い分けましょう。
哺乳瓶やストローも同じです。特に離乳食期はうっかり共有してしまいやすいので注意が必要です。
◎キスや口移しは控える
愛情表現として赤ちゃんにキスをしたり、食べ物を口移しで与えたりする習慣は、むし歯菌を移す大きな原因になります。特に乳歯が生え始める時期は控えた方が安心です。
◎親自身のむし歯を治療する
自分にむし歯がある状態で子どもと接すると、感染のリスクが高くなります。
定期検診を受けてむし歯や歯周病を治療し、口腔内を清潔に保つことが、最大の予防策となります。
◎フッ素を利用する
歯科医院でのフッ素塗布や、家庭でのフッ素入り歯磨き剤の使用は、歯を酸に強くし、むし歯の発生を防ぐ効果があります。
小児向けに濃度を調整した製品もあるため、年齢に合わせて取り入れましょう。
■赤ちゃんのむし歯を防ぐ生活習慣
◎食生活に気をつける
砂糖を含むおやつやジュースを頻繁に与えると、むし歯菌のエサとなりむし歯リスクが高まります。
時間を決めておやつを与え、ダラダラと食べる習慣は避けましょう。
◎仕上げ磨きをする
子どもが小さいうちは、自分でうまく磨けません。
親が仕上げ磨きを行い、歯の隅々まで清潔に保つことが大切です。歯ブラシは子どもの年齢に合った柔らかいものを使いましょう。
◎定期的に歯科検診を受ける
大人だけでなく、子どももかかりつけの歯科医院で定期的にチェックを受けることで、むし歯の早期発見や予防につながります。乳歯は永久歯よりもむし歯になりやすい特長があるため、注意が必要です。
【完全に防ぐことは難しいが、小さな習慣で注意を】
むし歯はうつるというのは事実であり、その多くは親や家族からの唾液を介したむし歯菌の感染によるものです。
特に乳歯が生え始める時期は注意が必要で、親の口腔ケアや生活習慣が子どもの将来の歯の健康に影響することがあります。
親自身がむし歯を治療して清潔な口内環境を整える・食器の共有を避ける・仕上げ磨きやフッ素ケアを取り入れることで、子どものむし歯リスクを減らすことができます。